救急総合病院建設推進活動講演会 in 裾野

8月9日2時開演の「救急総合病院建設推進活動 講演会」の記録です。皆様のご意見をお待ちしています。

裾野市・駿東伊豆地区における救急医療体制(特に二次救急病院の不足)の課題解決と、救急総合病院建設を目指す講演会の記録

1. 全体概要

本講演会は、裾野市を含む北駿(ほくすん)地区(裾野市・御殿場市・小山町)における深刻な二次救急医療体制の不足と医療資源の地域偏在問題を解決するため、新たな救急総合病院の建設と医療改革を訴える目的で開催されました。 事務局の西原氏が現状と将来予測のデータを提示し、荒川正一先生が地域で起きている救急搬送困難の凄惨な現場実態と署名活動の動向を報告。さらに前田清貴先生が離島や民間病院での経営・再生ノウハウをもとに「AI導入による働き方改革への対応」や「オープンシステムを活用した持続可能な病院運営」を提言しました。

2. 演者ごとの講演内容

西原氏(北西地区の医療を考える会 事務局)

  • 講演の要点:
    • 医療資源の南北偏在: 駿東伊豆医療圏(約51万人)全体としては医療資源が足りているように見えるが、約7割の人口と医療資源の多くが南部の田方地域に集中している。
    • 裾野市の医療危機: 裾野市(人口約4.8万人)で二次救急を担うのは裾野赤十字病院(14病床・常勤医6名)のみ。循環器・呼吸器・消化器内科・産科の専門医がゼロであり、重症患者は三島や沼津に搬送せざるを得ない依存構造になっている。
    • 救急搬送時間と2040年問題: 搬送時間が県平均より長く(北駿地区は46.7分)、数分の遅れが致命的となる。2040年に向けて高齢化率が38.5%へ上昇する中、特に「回復期病床(662床不足の見通し)」の不足が深刻化する。
  • 解説:
    • データ上の「医療圏全体での充足」が行政の介入を遅らせ、住民の実感(不安)との間に大きな不一致を生んでいる点が最大の構造的課題です。回復期病床の不足は、急性期治療を終えた患者が自宅や施設へ戻れなくなる「医療難民」を急増させるリスクを示唆しています。

荒川 正一 先生

  • 講演の要点:
    • 活動のきっかけ: 2023年7月、御殿場地区で外科医不足により緊急手術ができない事態が発生。搬送先が決まらず現場の救急車が動けない事態に衝撃を受け活動を発足。
    • 実際の被害事例の報告:
      1. 転倒骨折後、受診拒否や対応遅延により血胸を発症し死亡した80代女性の例。
      2. スーパーで倒れるも受入れ先が決まらず搬送に1時間以上を要した例(医師から「2時間早ければ助かった」と言われた)。
    • 署名運動と行政・医師会とのギャップ: 裾野市で約4,700名、地域全体で17,000名以上の署名が集まっているが、行政や医師会の公式見解は「国の地域医療構想や制度上、新病院の開設許可は難しい」との壁があり平行線をたどっている。
  • 解説:
    • 制度や数値目標を優先する行政・医師会に対し、目の前で「防ぎ得た死亡・後遺症」が発生している現場の危機感が対立の根本にあります。15万人規模の署名(住民意思の可視化)をもって、県や国の「特例許可」を引き出す命を守る体制作りを狙っています。

前田 清貴 先生

  • 講演の要点:
    • 小規模救急病院の生存戦略: 13,000人規模の離島(徳之島等)で二次救急を完遂させた経験を提示。情熱を持った若手医師の育成環境を作れば医師集めは可能。
    • AI導入による医療DX: 「医師働き方改革」で労働時間が制限される中、AI音声認識を活用してカルテ作成や看護記録を自動化し、事務作業を4~5割削減する。これにより少人数でも黒字・高品質な救急経営が可能。
    • オープンシステム病院の提案: 自前で巨大な外来を持たず、近隣の開業医にCT/MRIや検査機器・病床を開放する「オープンシステム」型病院とすることで、地域の開業医と共存・共栄を図る。
  • 解説:
    • 「医師不足」「働き方改革」「赤字経営」という病院新設における三大ハードルに対し、医療DX(AI)と機能特化(検査・救急・回復期に特化し外来を開放)という具体的・実務的なソリューションを提示している点が革新的です。

3. 質疑応答(Q&A)

Q1. 「医師の働き方改革」が施行される中、新病院で医師やスタッフを確保し、経営を成り立たせることは可能なのか?

  • 質問者の意図: 全国的な労働時間規制の中で、医師の過重労働に頼る救急病院経営は破綻するのではないかという懸念。
  • 回答(前田先生・荒川先生):
    • AIによる業務削減: AIを用いた音声入力・書類自動生成システムを導入することで、医師・看護師の事務負担を40〜50%削減できる。現に前田先生が関与する病院(厚木等)ではこれにより少人数で黒字化と労働時間短縮を両立させている。
    • 外部ネットワークとコンサルタント医師の活用: 常勤専門医を全員揃えずとも、総合診療医がプライマリケアを行い、専門手術や高度判断は大学病院やグループ内の専門医ネットワーク・非常勤医をスポットで呼び出す体制でカバー可能。

Q2. 地元医師会や市議会・行政の反応はどうなのか?なぜ動きが鈍いのか?

  • 質問者の意図: 住民が必要性を感じているのに、なぜ行政や医師会は推進に後ろ向きなのか。
  • 回答(荒川先生・前田先生):
    • 既存組織の危機感と公式見解: 医師会の幹部からは「患者の奪い合いになるため反対」「現状でも対応できている」との見解が出されることがある。行政は「県や国の基準・病床規制があるため不可能」という公式論理を崩さない。
    • 解決策: 住民の直接的な署名運動(15万人目標)によって政治家や知事を動かし、制度の「特例」や「枠組みの変更」を認容させる方向へ持っていくしかない。

Q3. 既存の大規模病院(がんセンターや大学病院等)の高度医療機器(MRI・CT等)を活用したオンライン連携や、開業医との連携(トーク/オープンシステム)はできないか?

  • 質問者の意図: 莫大な投資をして単独で病院を作るのではなく、既存のインフラや先進技術(ウーブン・シティ等の地域基盤含む)を活用した効率的な連携はできないか。
  • 回答(前田先生・荒川先生):
    • オープンシステムの採用: 新病院はまさにその思想で作るべきである。自前で外来患者を囲い込まず、地域の開業医が検査機器(CT/MRI)を使えるプラットフォームとして開放する。
    • 患者・開業医・新病院の三方よし: 開業医は高額機器を自前で買わずに高度診断ができ、新病院は検査・入院・救急に特化でき、患者は身近で迅速な医療を受けられる。

Q4. 総合病院ができた場合、大病院特有の「長い待ち時間(5時間待ち10分診療)」は解消されるのか?

  • 質問者の意図: 順天堂病院やがんセンターでの実例を挙げ、新病院が患者にとって本当に使いやすいものになるのかを質問。
  • 回答(前田先生・荒川先生):
    • 一般外来の抑制とAI問診: 新病院は「救急・急性期・回復期」と「開業医からの紹介検査」に特化するため、混雑する一般外来を持たないスタイルにする。
    • 事前データ化: AI問診や音声入力により、医師がカルテに入力する時間を激減させ、診療の回転率と質の双方を向上させる。

4. まとめ 本講演会では、「救急病院が足りない」という地域住民の悲痛な叫びに対し、「15万人署名による政治・行政の突破(荒川先生)」「AI・オープンシステムを活用した革新的で持続可能な病院運営(前田先生)」 という2つのアプローチが示されました。単なる要望運動にとどまらず、最新の医療DXや地域共生型モデルを取り入れた具体的解決策が提示された点が大きな特徴です。

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